こんにちは。皮膚科医の玉城有紀です。
今回は「寒冷蕁麻疹(Cold Urticaria)」について、症状・原因・治療法・治療期間・一般的な蕁麻疹との違いまで、患者さんからよくいただく質問を中心に分かりやすく解説します。
寒い季節や冷たい飲み物で症状が出る方は、ぜひ参考にしてください。
寒冷蕁麻疹とは?
一般的な蕁麻疹と異なり、冷たい風・冷水・冷たい物に触れた部位だけに症状が出ることが特徴です。

冷たい刺激を受けた直後から数分以内に、
・赤み
・かゆみ
・ミミズ腫れのような膨らみ
が出現し、通常は 2時間以内に治まります。
しかし、広い範囲が冷水に触れると、
● 頭痛
● 全身の赤み
● 呼吸困難
● 低血圧
● 意識消失
など、アナフィラキシー(重症アレルギー反応)を起こすことがあり、注意が必要な病気です。

冷たい飲み物を一気に飲んだ場合、口腔内がむくんで窒息のリスクが生じる例も報告されています。
寒冷蕁麻疹はどれくらいの人に起こる?
一般的な「原因不明の蕁麻疹(特発性蕁麻疹)」に比べると、寒冷蕁麻疹は比較的少ない病気です。
刺激誘発型蕁麻疹の内訳は以下の通りです:
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機械性蕁麻疹:9%
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コリン性蕁麻疹:5%
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寒冷蕁麻疹:0.8%
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温熱蕁麻疹:0.4%
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日光蕁麻疹:0.3%
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薬剤・食事による蕁麻疹:0.7%

寒冷蕁麻疹の原因
寒冷蕁麻疹は、冷たい刺激が加わることで、皮膚の下にある「肥満細胞(マスト細胞)」が反応し、
● ヒスタミン
● ロイコトリエン
などの炎症物質を放出して起こります。
特発性の蕁麻疹と違い、刺激の温度が原因としてはっきりしていることがほとんどです。
治療法|まずは抗アレルギー薬から
治療の基本は、一般的な蕁麻疹と同じように 抗ヒスタミン薬 を内服します。

症状が治まらない場合は、
・抗ヒスタミン薬を増量
・必要に応じて薬剤を追加
など段階的に治療を強化します。
ただし、寒冷蕁麻疹は薬だけで完全に抑えることが難しいため、
たとえば、以下のような対策が効果的です:
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冬場の外出時は首元や手先をしっかり防寒
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冷水への突然の入水を避ける
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冷たい飲食物を一気に摂らない
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冷房の風が直接当たらないように工夫する
特に、プールや海など「全身が冷水に触れやすい場面」は、アナフィラキシーの危険性があるため、医師と相談しながら慎重に判断しましょう。

治療期間|自然に治ることも
寒冷蕁麻疹が自然に改善するまでの期間には個人差がありますが、目安としては以下の通りです。
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寒冷蕁麻疹:約6年
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機械性蕁麻疹:約7年
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日光蕁麻疹:約5年
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遅延性圧蕁麻疹:約7年
特発性蕁麻疹の方が、衣服の摩擦や圧迫による機械性蕁麻疹を併発することもあります。
一般的な蕁麻疹との違い
寒冷蕁麻疹と、原因不明の一般的な蕁麻疹(特発性蕁麻疹)との違いをまとめます。
① 発疹の出方
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特発性蕁麻疹:形が様々。丸いものから花びら状、地図状までさまざま
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寒冷蕁麻疹:冷たい刺激に触れた部分だけに赤い膨疹が出る
② 持続時間
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特発性蕁麻疹:半日〜1日
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寒冷蕁麻疹:通常2時間以内
③ アナフィラキシーの危険性
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特発性蕁麻疹:アナフィラキシーには基本的に至らない
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寒冷蕁麻疹:全身が急に冷えるとアナフィラキシーのリスクがある
④ 抗アレルギー薬への反応
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特発性蕁麻疹:薬だけで無症状になることも
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寒冷蕁麻疹:薬のみで完全に抑えるのは難しく「冷刺激の回避」が必須
まとめ
寒冷蕁麻疹は、冷たい刺激で症状が出るタイプの蕁麻疹で、場合によっては重症化することもある病気です。
薬による治療は大切ですが、「冷たい刺激を避ける」ことが再発予防の最大のポイントになります。
長期的には自然に治る可能性もありますので、焦らず、医師と相談しながら治療を続けていきましょう。



