実はデリケートゾーンの痒みで悩んでおられる方の多くは、人に相談できないし、病院に行くのが恥ずかしいという理由で、市販薬を使ったり我慢されている方が多くいらっしゃいます。デリケートゾーンは粘膜に近い部分で、下着でいつも覆われていますので、湿度が高く、汗や汚れが溜まりやすい場所でかぶれを起こしやすかったり、細菌・ウィルス・真菌(カビ)が繁殖しやすい条件が揃っています。中には、かき壊して血が出ている方もおられます。
デリケートゾーン(陰部)のかゆみの原因
陰部のかゆみの原因には、ムレ・かぶれ・乾燥・感染症など様々な原因が考えられます。皆さんの痒みの原因が一体何なのかを一緒に考えていきましょう。
デリケートゾーンの「ムレ」が原因のかゆみ
湿度が高くて、通気性の悪い下着により、蒸れることがあります。特に暑い季節や運動後は汗をかいて、そのまま下着を変えないでいると濡れた下着をそのまま履いていることになり、蒸れが悪化します。通気性がいい下着に変えたり、濡れたら履き替えるようにしてください。
デリケートゾーンの「かぶれ」が原因のかゆみ
かぶれというのは、皮膚科では「接触皮膚炎」という名前がついていて、外からの刺激によって炎症を起こした状態です。皮膚の一番外側にある表皮は、外部からの刺激から皮膚を守っていますが、このバリア機能が落ちたり、強い刺激が加わることが原因となり、かぶれが起こります。刺激の原因になるのは、汗・尿・便・皮脂・乾燥が考えられます。
女性の場合は、生理のときにナプキンやタンポンの紐がこすれたり、生理の血やムレでかぶれたり、下着によって締め付けられたりして起こります。
更年期の方では、尿もれによるかぶれもあります。更年期には、女性ホルモンである「エストロゲン」が減ることで骨盤底筋群がゆるみ、尿もれを起こしやすくなります。
また、デスクワークの方や運動をしない方は骨盤底筋群の筋力が低下しやすく、尿もれにつながることがあります。尿もれパットは通気性がわるく、また、デリケートゾーン(陰部)がこすれるため、強いかぶれとなることもあります。こまめにパットの交換をしても、細菌繁殖が生じやすいため、炎症が強く起こることがあります。
デリケートゾーンの「乾燥」が原因のかゆみ
皮膚が乾燥するとバリア機能が落ちるので、刺激を感じやすくなります。
デリケートゾーンの「感染症」が原因のかゆみ
性感染症は性的な接触によって感染する病気のことですが、感染症といっても細菌・ウィルス・カビと様々ありますので一つずつ確認しましょう。
デリケートゾーンは粘膜なので、皮膚とは違い、バリア機能がとても弱いため、細菌・ウィルス・カビが繁殖しやすい部位です。下着で覆われているので、高温多湿になりやすく、餌となる皮脂や汚れが溜まりやすい場所でもあります。
性器ヘルペス
性器ヘルペスは単純ヘルペスウィルスによる性感染症で、一度感染すると、神経の中に潜んで生き続けますので、熱を出したり疲れたりなど免疫力が低下したときに再発します。これはどちらかというとかゆみより痛いのが辛い病気で、水ぶくれができます。
性器クラミジア
クラミジア・トラコマティスという細菌によるもので、日本ではとても多い性感染症です。男性は尿道の不快感やかゆみ・尿道の分泌物が増加します。
女性は自覚症状は少ないですが、おりものが増えて多いです。しっかり治療をしないと、男性では尿道炎や精巣上体炎、女性では子宮頸管炎を起こして、不妊の原因にもなります。
膣トリコモナス症
トリコモナスという原虫による性感染症です。男性は無症状なことが多くて、女性では悪臭のある黄色いおりものが増えたり、すごくかゆくなります。まれにタオルやシーツを介してうつることがあるので、必ずしも性感染症ではないことがあります。
性器カンジダ症
カンジダはもともと常在菌として存在している真菌(カビ)なので、感染しても、特に症状がない場合も多いですが、免疫力が低下したときとか、抗生剤を内服して、膣の常在菌が乱れたときに発症します。
男性は、無症状なことがおおいですが、女性はヨーグルトみたいなおりものが増えてとてもかゆいのです。
いんきんたむし
インキンタムシも必ずしも性感染症ではありません。白癬菌という真菌による感染症で、赤い湿疹とかゆみが出ます。サウナなどの公共施設でうつることがありますし、真菌に感染したペットを抱っこして触れていても発症することがあるので注意が必要です。
毛ジラミ症
ケジラミという吸血する昆虫が、陰毛に寄生して起こります。とてもかゆく、性行為がなくても、タオルやシーツを介してうつることがあります。
デリケートゾーンの「病気」が原因のかゆみ
感染症以外で考えられる病気について説明します。この場合も適切な治療が必要です。
萎縮性腟炎
萎縮性皮膚炎は老人性腟炎とも言われていて、更年期になり、女性ホルモン分泌が低下すると、腟や外陰部が乾燥して萎縮し、デリケートゾーン(陰部)がかゆい、違和感がある・歩くとすれて痛いなどの症状が出てきます。この場合は女性ホルモンを補充する塗り薬や内服・貼り薬の治療をします。
外陰部癌
外陰部に好発する難治性のかゆみや疼痛、排尿障害、性交痛、排便痛が起こり、陰部が白色に固くなる、硬化性萎縮性苔癬という病気があります。
外陰部発症の硬化性萎縮性苔蘚は悪性化することが知られていて、有棘細胞癌を 3〜21%に発生すると報告されています。
カンジダ外陰腟炎
いわゆる性病ではなく、膣内の常在菌のバランスが崩れたことによって起こる膣炎です。ストレス・睡眠不足・生理・抗生剤の内服など免疫が低下したときに発症します。
細菌性腟症
膣の中は、良い菌と悪い菌のバランスが取れた状態に保たれていますが、このバランスが崩れると、おりものが増えて、灰白色(かいはくしょく)になって魚の腐ったようイカ臭いような悪臭が起こることがあります。性行為がなくても、膣の中を洗浄しすぎて良い菌を洗い流してしまったり、疲れや睡眠不足で免疫力が低下すると起こることがあります。
デリケートゾーンの「ホルモン変化」が原因のかゆみ
女性の場合、生理周期や妊娠、更年期などによりホルモンは変化します。これによって、ホルモンバランスが乱れたり、免疫力が弱まったりすると、デリケートゾーンにかゆみを引き起こすことがあります。
生理周期によるホルモンの変化
生理前はエストロゲンやプロゲステロンのホルモンバランスが乱れて肌が敏感になっています。
妊娠によるホルモンの変化
妊娠中は血行が良くなり、かゆみを感じやすく、免疫機能が低下するので、カンジダなどの真菌感染のリスクが増えます。
更年期によるホルモンの変化
更年期には更年期障害としては、イライラやホットフラッシュがよくある症状ですが、デリケートゾーンの痒みも起こります。
お年を召されると、徐々に卵巣の機能が低下して、女性ホルモンの分泌が低下します。女性ホルモンが少なくなると、生理が起きなくなっていつかは閉経しますが、それだけではなくデリケートゾーンの潤いが少なくなり、乾燥して膣や外陰部の皮膚が薄くなり柔軟性が低下するので違和感や不快感・かゆみに繋がります。
デリケートゾーン(陰部)のかゆみの医療的対処法
かゆみが強い方は、まずはカンジダのチェックをして、おりものが増えているのであれば性感染症の疑いがないか産婦人科でチェックをしてもらいます。抗アレルギー剤の内服を行い、かゆみのサイクルをしっかりとめないと、かゆみが続いてしまいますので、必要なときには弱いステロイドを処方します。
デリケートゾーン(陰部)のかゆみの予防法、セルフケア
デリケートゾーンは皮膚が薄いので、ウォシュレットで洗いすぎたり、洗浄作用の強いものを使うと悪化します。ムレや刺激はちょっとした心がけで良くなることもあります。
適度な衛生管理、洗浄方法について
痒いからと言って、シャワーを当てたり強く擦ると悪化します。皮膚が薄くてデリケートなので、泡立てて、刺激の少ない洗浄剤を使いましょう。
シワの間など汚れが溜まりやすい場所は広げながら丁寧に優しく洗ってください。
肌は弱酸性なので、同じく弱酸性のものや殺菌成分が配合されたものを試してみてください。生理のときは、ナプキンをこまめに変えることでもかゆみは軽減されます。
適切なトイレケア、トイレでのデリケートゾーンの拭き方について
清潔にしなければ!とビデなどで腟内を洗いすぎてしまうと、デーデルライン桿菌が低下してしまいます。デーデルライン桿菌(かんきん)は本来膣の中に常在している乳酸菌で、膣の中を弱酸性に保つことで膣に細菌が入るのを防いでいます。このような働きを膣の自浄作用と言いますが、抗生剤の内服や必要以上に腟内を洗浄すると、自浄作用が低下してしまいます。
吹くときは、前から後ろに向かって優しく吹くことで、細菌や真菌をデリケートゾーンに持ち込むリスクを避けます。
デリケートゾーンに優しい下着を選ぶ
通気性や吸湿性がいい綿素材に変更して、こまめにかえてみるのもいいです。タイトな下着は通気性が悪くて湿度が高くなるので、できるだけ避けてください。あとは刺激の少ない清潔なタオルを使いましょう。他の人との共有のタオルを使用することはやめてください。使用済みのタオルは汚れが付着していることがあるので、こまめに洗濯をしてください。
デリケートゾーンの過度な摩擦を避ける
ショーツでこすれる部位が痒くなる方は、女性の場合、特に下着が小さくて歩くたびにこすれますので、そのような場合はボクサーパンツをおすすめしています。
デリケートゾーンの適切な保湿
皮膚を保湿することで、乾燥を防いでかゆみを和らげることが出来ます。刺激が少ない無香料の保湿クリームを選んで、指の腹を使って優しくのせるように塗ってください。
デリケートゾーンのお悩みは遠慮なく皮膚科・産婦人科へ
デリケートゾーン(陰部)のお悩みは、年齢を重ねるごとに増えていきますし、白癬菌やシラミは直接接触しなくても、お風呂の椅子やタオルを介して感染しますし、特にシラミは温泉やプールなどでもうつることがあるので、最後にシャワーでよく洗うようにしてください。
市販の薬を使ってもかゆみが強くて眠れない、おりものが増えたなど性感染症の可能性がある、水ぶくれができている、そのような場合ははお近くのクリニックを受診してください。
自由ヶ丘ファミリー皮ふ科、二子玉川ファミリー皮ふ科、溝の口駅前皮膚科では女性医師が対応する日がほとんどです。安心してご相談ください。