足の裏がかゆいときや湿疹、ぶつぶつができたときに思い浮かぶのが「もしかして水虫かも?」ではないでしょうか。足の裏にかゆみや湿疹ができる疾患は水虫だけではありません。皮ふが赤みを帯びていたり膿をもったぶつぶつができていたら別の疾患の可能性があります。疾患によって対処方法が異なるため、まずは原因を知ることが大切です。
足の裏が痒い原因は?
様々な理由で足の裏が痒くなることがありますので、その原因についていくらかご説明します。
最も多くある足が痒い原因は、水虫(足白癬あしはくせん)
カビの一種でもある、水虫菌が、皮膚の角質に寄生することによっておこる皮膚の病気で、体にもできますが、9割が足にできます。足に繁殖しやすいのは、靴を履くので足が蒸れて菌にとって過ごしやすい高温多湿な環境を作るからです。
接触皮膚炎
かぶれとも言われますが、何かに触れて、かぶれたところが痒くなり小さな水ぶくれや痒みが起きます。
虫刺され
虫に刺された皮膚が炎症をおこし、赤みやかゆみを引き起こします。
皮膚掻痒症(ひふそうようしょう)
特に見た目には何もなくても、かゆいのでかきこわしていると、湿疹が起きます。
アトピー性皮膚炎
左右対称で、首・膝裏・ひじの内側が治療をしても繰り返す病気ですが、足の裏にも湿疹が起こることがあります。大体の方がステロイドを塗っているので、水虫になりやすいです。ステロイドを使っていても湿疹が悪化するというときは、水虫がいないか顕微鏡でチェックします。
掌蹠膿疱症
手のひらと足の裏に、膿を持った水ぶくれやかさぶたが たくさんできる病気です。
汗疱・異汗性湿疹
水虫と症状がとても似ています。手のひらや足の裏にかゆみを伴う小水疱がたくさんでき、特に夏に悪化します。原因ははっきりしませんが、夏に起りやすくて汗をかく人が多いので、汗が関係しているのでは?と言われています。足白癬との見分け方は、皮膚の一部を顕微鏡で見れば分かります。
水虫だと思って水虫薬を使っても、全然良くならない方は汗疱の可能性があります。
足の裏が痒い原因で多い水虫(足白癬 あしはくせん)
ご相談が一番多い水虫についてご説明します。
水虫(足白癬)とは?
実は、日本人の水虫患者さんは約2500万人もいらっしゃいます。実に5人に一人が足水虫にかかっているのです。爪の水虫は10人に一人がかかっています。足水虫は夏に多くて冬に少ないですが、爪白癬(つめはくせん)は季節変動がなくて、60歳以上の方は4割の方が爪水虫をお持ちといわれています。
ではそもそも水虫って何なのでしょうか?水虫は真菌つまりかびのことで、足以外にも水虫はできます。一般的には足の指の間が、ジュクジュクしたり、痒くなったり白くふやけたりしている方が多いです。かかとの角質が固くなったり、小さい水ぶくれが足の裏にできることもあります。
皆さん、水虫かもって思っていても、放置してたりしてませんか?しかも水虫かもしれないって市販薬使ったりしてませんか?水虫かどうかはそもそも、皮膚科で顕微鏡で水虫がいるか調べないと分からないので、自分ではわからないのです。気になる方はお近くの皮膚科を受診なさってください。水虫に似ているけれど、実は水虫ではない疥癬(かいせん)や掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)・汗疱(かんぽう)という病気もあるので、ご注意下さい。
水虫(足白癬)の原因
水虫は白癬菌(はくせんきん)というカビの一種が皮膚について増殖して起こす感染症です。
皮膚は外側から表皮・真皮となっていますが、表皮の一番外側に角質細胞と言われる平べったい死んだ細胞がれんがみたいに積み重なっています。角質細胞は、最終的にはアカとなって剥がれ落ち、これが皮膚のターンオーバーと呼ばれるものです。
水虫菌は普段は角層に潜んでいて、ケラチナーゼというタンパク質を分解する酵素を出して角質細胞を溶かし増えていきます。角質は先程申し上げた通り、死んだ細胞の集まりなので、ここで水虫菌が増えている間は症状はありません。
しかし、水虫菌が増えながらどんどん角質の下まで進んでいくと、やがて顆粒層というもっと真皮に近い層に接触します。そうなると、水虫菌を排除しようとして、白血球やリンパ球が集まってきて炎症が起こり、かゆみや水ぶくれなどの症状が現れるのです。
水虫(足白癬)の症状
3つの症状があり、趾間(しかん)型・小水疱(しょうすいほう)型・角質増殖型です。一番クリニックにいらっしゃる方が多いのは趾間型です。指の間が白くふやけて皮が剥けて熟々しています。小水疱型は土踏まずに多く見られて、小さい水ぶくれがあって、やぶれて皮むけを起こします。角質増殖型は特にかかとが硬く厚くなって、ひどいとひび割れを起こします。
皆さん、水虫は痒いものだと思われていますが、実は痒いとおっしゃる方は10%くらいなので、かゆみがなくても水虫は疑ったほうがいいです。
足の裏の痒みを放置するリスク
水虫は命に関わるものではないのですが、人によっては命に関わることもあるのはご存知でしたか?水虫がいると、指の間がジュクジュクして白くふやけてくるので、皮膚が脆くなって、そこに傷ができて、別の細菌が入ってしまうと皮膚の感染症である蜂窩織炎(ほうかしきえん)を起こすことがあるのです。
特に、糖尿病があると、細菌感染を起こしやすくなりますし、知覚が鈍ってしまい、痛みを感じにくくなるので、かなり悪化してから受診される方もいらっしゃいます。そうすると、本当に酷い方だと、足が壊死しかかっていて切断する方もいらっしゃいますし、入院して治療をしても、酷い細菌感染を起こすと壊死性筋膜炎になり、死に至ることがあります。特に足の間の皮膚は薄いので、その傷口から細菌が侵入することは多いので、たかが水虫とは思わないでください。
水虫(足白癬)の治療法
皆さん、よく間違えていらっしゃるのが、足の水虫の症状があるところだけに塗っている方がいます。それは間違った塗り方です。指の間の皮がめくれているからといって、そこだけ塗っていませんか?水虫菌は症状がなくてもひそんでいますので、足のすべての指の間、付け根、足の裏全体、背面、かかとまで広く隙間なく塗るのが正しい塗り方になります。
さらに重要なことが、両足に塗るということです。片方の足だけ水虫菌を踏んでいるとは限りません。今は症状がなくても片方の足だけ水虫菌がいると診断されたら、もう片方の足も同じように塗ってください。そう塗ると、大体1本10gのお薬を1週間で使い切ることになります。
塗る時間はお風呂上がりが効果的です。入浴後は皮膚が清潔になっていて、角層が柔らかくなっているので、薬が浸透しやすくなっているのです。しかし、きれいにしたくて、ゴシゴシ擦るのはやめて下さい。洗いすぎると、皮膚を傷つけてしまい、そこから水虫が角層に入りやすくなりますので逆効果です。優しく洗って、水気を拭き取ってから薬を塗るようにしましょう。
しかも、よくありがちなのですが、かゆみもないしもういいかなってすぐに塗り薬をやめる方がたくさんいらっしゃいます。でも水虫菌は治ったと思っても、実は水虫菌って角層に潜んでいるのです。このまま放置してしまうと、じわじわ水虫菌が繁殖して角層の下に入り込んでいてしまい、いつまで経っても治りません。
角層が垢になって剥がれ落ちるまでは1~2ヶ月かかりますので見た目がきれいになってからも、1~2ヶ月塗り続ける必要があります。これをご存知ない方が多すぎます。だから再発してしまう方が多いのです。
重要なのでまとめますと、
1.症状があるところだけではなく、両足に隙間なく塗るので、 1本1週間で使う
2.症状がなくなっても1~2ヶ月は塗り続ける
この2点をよく覚えていてください。
爪にも水虫菌が感染すると、爪が分厚くなり、脆くて、がたがたと2重になったり、爪が伸びにくくなります。皮膚の水虫は塗り薬で治療することもありますが、爪にも症状が出てくると、塗り薬では何年間もかかってしまうので内服治療が必要になります。
あと、水虫って夏に増えるといいますが、これは治ったわけではなくて、気温や湿度が下がったおかげで、白癬菌が減っただけで また夏になると増殖してくるので症状が再燃します。
なので、水虫はしっかりと、最後まで治し切ることが大切なのです。
水虫(足白癬)の予防法
治療をしていない水虫の患者さんからは、常に水虫菌を含んだ垢が、家中にばらまかれています。特にトイレのスリッパやバスマットに潜んでいます。垢と一緒だと水虫菌は1年以上生き続けるので、洗濯できないものは、しっかり乾燥させ、家具の下や階段。部屋の隅などゴミが溜まりやすい場所はこまめに掃除をしましょう。
銭湯やサウナなど大勢の人が使用する浴場の足拭きマットには100%水虫菌がいると思って、十分に水気を拭き取り靴下を履いてしまいましょう。
もしも十分、足を乾かす時間がない場合は、家に帰ってからすぐに足を洗って下さい。水虫菌は踏んでも、感染が成立するのに24時間くらいかかるので、それまでに足をきれいに洗えば感染のリスクを防ぐことができます。
ただ、足の裏に傷があると、12時間くらいで感染しますので、傷がある方はご注意ください。
靴もしっかり乾燥させて、毎日同じ靴を履かないようにして下さい。できるだけ通気性の良い靴下やサンダルを履くようにして、スリッパを家族で同じものを使うのはやめてください。
市販薬やクリームでできる対処
湿疹(ぶつぶつ)が見られる場合はステロイド外用剤で、かゆみや炎症を抑えながら足をかかないことが大切です。
また、弱いランクのステロイド剤から試してみるのではなく、年齢に合ったランクのステロイド外用剤で一気に治しましょう。ステロイド外用剤は副作用が強いというわけではなく、「広範囲に使わない」「長期間使わない」「感染を起こしている部分には使わない」などの注意を守って使用するようにしましょう。
皮膚科を受診すると良い場合
1週間で改善しない場合や症状が悪化したときは、炎症ではない別の疾患や原因が除去できていないことが考えられるので、その場合はお医者さんの診察を受けましょう。
水虫でも湿疹が見られますが、白癬菌による感染性なので、ステロイド外用剤ではかえって悪化する場合があります。特に家族に水虫をもった方がいる場合など、「もしかして水虫かも?」と思ったら、お医者さんの診察を受けましょう。
足の蒸れが原因でも足の裏がかゆくなる
特に病気でなくとも蒸れていることが原因であることもあります。普段から以下のポイントを役立ててみてください。
靴や靴下による足の蒸れ
特にお子さんの場合は、遊んでいて足に汗をかいて蒸れてしまい、そのまま濡れた靴下を履き続けることで皮膚がふやけて敏感になり、汗による刺激も重なってかゆみを生じることがあります。
足の蒸れの対処法
通気性のいい靴下を履く、濡れたら靴下を変える、適度に靴を脱ぐなどしてください。
足の痒みでご心配な方は皮膚科の受診を
足の裏の痒みが長く続いていたり、繰り返しているときは、水虫か他の病気なのかを調べるためにも、自由ヶ丘ファミリー皮ふ科、二子玉川ファミリー皮ふ科、溝の口駅前皮膚科にご相談ください。