みなさんこんにちは。皮膚科医の玉城有紀です。
このブログは、皮膚の病気で悩む患者さんに正しい知識を広めていくために、現役の皮膚科医としての経験をもとにお届けしています。
今日は「水いぼ(伝染性軟属種)」について。
水いぼって何が原因なの?どんな症状が出るの?治療はどうすればいいの?自然に治るの?子供がなった場合に学校やプールはどうしたらいいの?
こういった疑問にひとつずつ答えていきたいと思います。
水いぼ(伝染性軟属種)って何が原因?
原因は伝染性軟属腫ウイルス(ポックスウイルスの一種)。このウイルスが皮膚の小さな傷や毛穴から侵入して、皮膚の細胞内で増殖することで発症します。
日本ではお子さんの5〜10%が感染するといわれています。特に、1歳から10歳くらいまでの子供に多いのが特徴です。理由は、肌のバリア機能がまだ十分に発達していないから。また、アトピー性皮膚炎を持つ子供も感染しやすい傾向があります。
大人にも感染することはありますが、やはり子供に圧倒的に多く、集団生活をしていると接触を通じて広がってしまうケースが少なくありません。
水いぼの症状
水いぼは、表面がつるつるして光沢のある、1〜5mmほどの小さなぶつぶつとして現れます。色は肌色や白っぽい色で、中央に小さなくぼみがあるのが特徴です。なぜ「水いぼ」と呼ぶかというと、水を含んだようにぷっくりと透明感があるように見えるからです。
しかし実際には中に白っぽい物質が詰まっていて、その中にウイルスが含まれています。
痛みやかゆみは通常ありません。ですが乾燥肌やアトピーがあると、かゆみから掻き壊してしまい、ウイルスを含んだ液が他の部位に広がってしまうこともあります。腕やお腹など広範囲に増えてしまい、気づいたときには数十個以上になってしまうこともあります。
水いぼの治療法
水いぼは自然に治ることも多いため、「絶対に治療しなければならない病気」ではありません。
ただし、増える前に対応した方が治療が楽になり、他人にうつすリスクも減らせます。ここからは主な治療法を解説します。
自然治癒する?
水いぼは、体がウイルスに対する免疫をつけていく過程で自然に治ることがあります。多くの場合は数か月〜1年で自然治癒します。早いと半年、長いと2〜3年かかることも。
ただし、その間に数が増えたり、かゆみで掻き壊してしまったり、兄弟や友達にうつす心配をしなければなりません。さらに数が多くなると治療が大変になりますので、皮膚科としては「数が少ないうちに治療を始めるのがおすすめ」と考えています。
摘除治療
もっとも確実で早い方法は、特殊なピンセットで一つ一つ取り除く方法です。
これは即効性があり、取ればその場で水いぼがなくなるのですが、どうしても痛みを伴います。お子さんには麻酔テープを事前に貼って痛みを軽減することもありますが、それでも「つままれる」という行為そのものが怖くて泣いてしまう子もいます。
また、感染から症状が出るまでに数週間から2〜3か月かかるため、取ってもまた新しく水いぼが出てくることもあります。
内服薬(飲み薬)
補助的な治療として使われるのが「ヨクイニン(薏苡仁)」という漢方薬です。
はと麦茶の成分として知られており、ウイルスに対する免疫を高める効果が期待されています。お菓子のようにポリポリ食べられるタイプもあり、子供にとって飲みやすいのが利点です。ただし効果はあくまで補助的で、これだけで治すのは難しいとされています。
外用療法
「痛い治療は避けたい」という方には、銀イオンを配合した専用クリームを使う方法もあります。代表的なのがmBFクリームで、水いぼ治療のために開発された世界初の外用薬です。
銀イオンは古くから消毒に使われてきた成分で、低濃度でも多くの細菌やウイルスを抑える作用があります。副作用も少なく、塗るだけで痛みがないのがメリットです。ただし、これは自費診療で、市販はされておらず医療機関でのみ取り扱われています。
数週間〜2か月で赤く反応し始め、その後徐々に縮小・消退していき、完治まで3〜6か月かかるとされています。注意点は、銀が紫外線に弱いため、腕や顔など日光の当たる部位には夜だけ塗るようにすることです。
冷凍凝固療法
液体窒素で水いぼを凍らせて壊す方法です。マイナス196度で強制的に破壊します。
ただし痛みが強く、色素沈着のリスクもあるため、現在はあまり積極的に行われていません。
水いぼの予防法
水いぼは接触感染で広がるため、予防には工夫が必要です。
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肌を保湿してバリア機能を整える
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掻いてつぶさないよう注意する
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タオル・ビート板・浮き輪の共用を避ける
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プールや入浴後はシャワーで洗い流す
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ラッシュガードで覆って感染拡大を防ぐ
乾燥肌や湿疹があると感染リスクが高くなるので、普段からのスキンケアも大切です。

子供が水いぼになった場合
学校に行っていい?
水いぼは感染症ではありますが、出席停止の対象ではありません。そのため学校を休む必要はなく、普段通り通学できます。
プールに入ってもいい?
プールの水自体でうつることはありません。
そのため、医学的にはプールに入っても大丈夫です。
ただし、タオルやビート板などの共用を避けること、プール後にはシャワーで洗い流して保湿をすることが大切です。掻いて潰してしまうと感染が広がるリスクがあるので注意しましょう。
まとめ
水いぼは、子供によく見られるウイルス性の皮膚感染症です。多くは自然に治る病気ですが、数が増えたり人にうつすリスクを考えると、早めに治療を始めるのがおすすめです。治療法にはピンセットでの摘除、飲み薬、外用薬、冷凍凝固などがあり、それぞれに特徴があります。
学校やプールは原則禁止されていませんが、感染拡大を防ぐための工夫は必要です。お子さんが水いぼになって心配な場合は、皮膚科で相談してください。
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