手のひらがかゆい!原因と皮膚疾患9選、手湿疹 の予防法や治療法を皮膚科医が解説

かゆい(痒い)

手のひらがかゆい原因や皮膚の疾患は様々です。原因を知って正しい治療や予防をしましょう。

手のひらがかゆい場合の考えられる皮膚疾患9選

手のひらがかゆい場合は以下の9つの疾患が考えられます。

1.手湿疹
2.汗疱(かんぽう)、異汗性湿疹
3.掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)
4.手白癬(てはくせん)
5.疥癬(かいせん)
6.乾癬(かんせん)
7.カンジダ性指間びらん症、カンジダ性爪囲炎(そういえん)
8.アトピー性皮膚炎
9.皮膚掻痒症 (ひふそうようしょう)

それぞれの疾患について説明します。

1.手湿疹

手湿疹は、手のひら、手の甲、指に赤み、腫れ、水ぶくれ、かゆみ、ひび割れなどの症状が現れる皮膚疾患です。原因は、水仕事やアルコール消毒によって手の油分や水分がなくなったり、化学物質への接触、アレルギーなど様々です。特に水仕事や、紙を頻繁に扱う仕事をしていると、皮脂や角質が落ちてしまい、皮膚のバリア機能が弱まるため、刺激に対して反応しやすくなり手荒れ(手湿疹)が起こりやすくなります。予防には、水仕事の際にゴム手袋を着用すること、手洗いの後はしっかりと保湿することなどが重要です。治療には、ステロイド外用剤や保湿剤などが用いられます。

2.汗疱(かんぽう)、異汗性湿疹

汗疱(かんぽう)・異汗性湿疹は、手のひらや足の裏に1〜2mm大の小さな水ぶくれが多発し、その後皮が剥ける皮膚疾患です。原因は不明ですが、水ぶくれは自然に吸収され、数か月以内に治癒することが多いです。

異汗性湿疹と次にご説明する掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)は、まったく別の病気なのですが、手のひらと足の裏に出現することと、金属アレルギーが関与する可能性があること、水虫(足白癬)と間違われていることが多いことなど共通点も多いです。

どちらも、手のひらや足の裏が赤くなりますが、異汗性湿疹は小さい水ぶくれと激しい痒みが特徴で膿疱と言って皮膚が部分的に膨れ、中に膿がたまった状態のものはでません。掌蹠膿疱症の場合は痒みがあっても強くないことが多く、常にあるというわけではありませんが周期的に大きさのそろった膿疱が出現します。

3.掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)

掌蹠膿疱症は、手のひらと足の裏に小さな水疱や膿疱が繰り返しできる病気で、良くなったり悪化したりを繰り返します。原因は不明ですが、喫煙、銀歯による金属アレルギー、ストレス、扁桃炎・副鼻腔炎など、様々な要因が関与していると言われていますが特に原因がない方もおられます。

細菌やウイルスが原因ではないため、感染することはありませんが、数年単位での治療が必要で、重症になると胸鎖関節など炎症が起こり、関節痛がおこることもあります。扁桃炎や副鼻腔炎がある人はその治療を行っていただき、喫煙者は禁煙をおすすめします。

治療は、強いステロイドやビタミンD3製剤の外用やエキシマという保険でできる光線治療が効果的です。

4.手白癬(てはくせん)

手白癬は、白癬菌というカビが皮膚に感染し増殖することで起こる疾患で、いわゆる水虫の一種です。手白癬は、足白癬(水虫)や、白癬菌に感染した人や動物などに直接触れることで感染しますので、もし足に水虫がいたら足の水虫も治してください。片方の手だけに症状が出ることもあります。

手白癬は、指と指の間の皮が薄くむけたり、皮が厚く硬くなって亀裂を生じたり、小さな水ぶくれが生じたりすることが多く、症状が出ている皮膚一部をピンセットで取って、顕微鏡で水虫を見つけて、診断しています。

5.疥癬(かいせん)

疥癬は、ヒゼンダニというダニが皮膚に寄生することで起こる感染症で、特に夜間に強い痒みを伴います。よく、介護施設で見られる病気で、1〜2ヶ月の潜伏期間があって、人から人へとうつる病気なので、家族や周囲の人に感染を広げないよう注意が必要です。疥癬の治療には、イベルメクチン(ストロメクトール)という飲み薬を空腹時に内服します。疥癬の症状としては、指と指の間に2~5mm程度の淡い赤色の皮疹や線状の皮疹が見られます。

6.乾癬(かんせん)

乾癬は、皮膚に赤い皮疹ができ、その上に白っぽいかさぶたのような角質が重なるのが特徴です。乾癬は全身どこにでも発生しますが、特に爪とその周囲に赤い皮疹ができると手湿疹と間違えられることがあります。乾癬の場合は、軽く引っかくと角質がぽろぽろとはがれ落ちます。また、爪の表面がデコボコになったり、爪が弱くなってはがれたりすることもあります。

7.カンジダ性指間びらん症、カンジダ性爪囲炎(そういえん)

カンジダ性指間びらん症は、水仕事をする人に多く、中指と薬指の間の皮膚がむけてかゆみと軽い痛みを生じます。カンジダ性爪囲炎は爪の周囲が赤く腫れ、押すと膿が出ることもあります。 カンジダ菌は常在菌であるため、誰にでも発症する可能性があり、特に水仕事や手洗いの頻度が高い人は注意が必要です。 

8.アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎は、かゆみを伴う慢性的な皮膚疾患です。肘や膝の内側に湿疹ができやすく、悪化すると全身に広がります。成長とともに掻きすぎて皮膚が厚く硬くなる傾向があります。夏は症状がジュクジュクし、冬は乾燥してカサカサするなど、季節によって症状が変化するのも特徴です。アトピー性皮膚炎はアレルギー体質の人に多く、皮膚のバリア機能が低下しているため、手湿疹も併発しやすい傾向があります。

9.皮膚掻痒症 (ひふそうようしょう)

皮膚そう痒症は、湿疹などの目立った皮膚症状がないにもかかわらず、皮膚にかゆみを感じる病気です。かゆみのため、皮膚を掻きむしってしまうことで炎症を起こし、二次的に湿疹などを発症することがあります。かゆみは全身に及ぶ場合もあれば、外陰部、肛門周囲、頭部など、特定の部位に限られる場合もあります。原因が特定できず長期化、慢性化するケースが多いため、適切な治療が必要です。

手湿疹の原因

手のかゆみでも多く発生する手湿疹についてより詳しく解説します。

手湿疹が発生するメカニズムによる分類

刺激性接触皮膚炎

刺激性接触皮膚炎は、原因物質に触れた部分に赤みや腫れ、かゆみなどの症状が現れる皮膚炎です。これは、物質自体の毒性や刺激によって起こり、誰にでも発症する可能性があります。刺激の強い洗剤や化粧品、薬品、食品などが原因となることが多いですが、衣類や紙との摩擦も刺激となりえます。皮膚のバリア機能が弱い人や乾燥肌の人、アトピー性皮膚炎の人は特に発症しやすい傾向があります。接触源を取り除くことで症状が改善されることがあります。

アレルギー性接触皮膚炎

アレルギー性接触皮膚炎は、特定の物質に触れることで、体がその物質に対してアレルギー反応を起こし、発症する皮膚炎です。 症状としては、赤みや腫れ、かゆみ、水ぶくれなどが現れます。 アレルギーの原因となる物質は人それぞれですが、ニッケルやクロムなどの金属、ゴム製品、洗剤、シャンプー、染髪料の成分、ウルシやサクラソウなどの植物などが挙げられます。 アレルギー性接触皮膚炎の治療では、原因物質との接触を断つことが最も重要です。 場合によっては生活環境や職業の変更も必要になることがあります。 皮膚科では、ステロイド外用剤や軟膏、かゆみを抑える内服薬が処方されます。

皮膚の状態による分類

角化型手湿疹

境界がはっきりした厚いうろこ状角質が皮膚表面に蓄積した状態が手の平にみられ、ぼろぼろ剥がれるような状態で、ひび割れができることもあります

同様の病変が足裏にも見られることがあります。中年以降の男性に好発します。原因は不明なことが多いです。

進行性指掌角皮症

進行性指掌角皮症は、湿疹の中でも皮膚が硬くなる傾向が強いものを指します。指の腹や手のひらの乾燥、ひび割れ、ひどくなると指紋が消える といった症状がみられます。 主婦の方で、水仕事が増えた場合のほか、銀行員、ピアニストやキーボードを多用する職業の人は指先の皮脂が減って、繰り返し指先を使うので、症状が現れることがあります。

貨幣状型手湿疹

貨幣状湿疹は、主に手であれば甲に1〜5cm程のコインのような円形、つまり貨幣状の湿疹ができる皮膚疾患です。かなり痒くて、かきこわすとジュクジュクとした浸出液が出てきます。一度なると、繰り返すことが多く、悪化すると、全身の湿疹が広がって、自家感作性皮膚炎になることがあるので、早く治療をした方がいいです。

汗疱型手湿疹

汗疱(かんぽう)・異汗性湿疹は、季節の変わり目に 手のひらや足の裏に1〜2mm大の小さな水ぶくれが多発し、その後皮が剥ける皮膚疾患です。原因は不明ですが、水ぶくれは自然に吸収され、数か月以内に治癒することが多いです。再発を繰り返す病気で、手湿疹と汗疱(異汗性湿疹)の両方を同時に発症している方もおられます。

乾燥・亀裂型手湿疹

乾燥・亀裂型手湿疹は、皮膚のバリア機能が低下することで引き起こされると考えられる手湿疹です。手のひらや指全体の乾燥と亀裂が特徴で、水ぶくれはできません。冬場に症状が悪化することが多いです。

手湿疹の症状

  • カサカサ期(初期):初期段階では、皮膚が乾燥し、指先の皮がむけやすくなり、不快感を感じます。
  • ひび割れ期(進行期):進行すると、皮膚が厚く硬くなり、ひび割れができて痛くなります。
  • じゅくじゅく期(重症期):重症化すると、皮膚が剥がれて赤く腫れ、出血や痛み、強いかゆみが現れます。 この段階では、細菌感染や化膿のリスクが高まってきます。

手湿疹の治療

手湿疹の治療では、症状の程度に合わせた治療薬を選ぶことが大切です。初期のカサカサ期には保湿剤とかゆみがつければステロイドを使います。進行して赤みやひび割れが生じる場合は、ステロイド外用剤やステロイドのテープを使います。症状が悪化し、じゅくじゅく期に進行した場合は、抗生剤が入ったステロイドの軟膏を使ったり、かゆみ止めを内服したり、光線治療をしたりします。

初期…保湿剤、ステロイド
進行期…外用剤、ステロイドのテープ
重症期…抗生剤が入ったステロイドの軟膏、かゆみ止め内服、光線治療

手湿疹の予防法

水仕事やアルコール消毒後の保湿

水仕事やアルコール消毒の後には、皮膚の保護のために保湿ケアが重要です。水仕事やアルコール消毒は、手の皮脂を奪い、肌のバリア機能を低下させてしまうためです。 乾燥した肌は外部からの刺激を受けやすく、炎症や発疹を起こしやすい状態になります。 保湿剤としては、保湿効果の高い尿素やワセリンを含むものが良いでしょう。 傷がある場合は、尿素を含むものは刺激が強いため避けてください。 クリームタイプより軟膏タイプの方が保護効果が高く、刺激も少ないため、皮膚が弱い方にもおすすめです。

水仕事はゴム手袋をつけて

水仕事は、手の皮脂を奪い、肌のバリア機能を低下させるため、手が荒れやすい方はゴム手袋を着用することをおすすめします。 ゴム手袋を着用することで、水や洗剤などの刺激から手を保護し、手湿疹を予防することができます。 ゴム手袋でかゆみが出る場合は、薄い綿の手袋の上から着用すると良いでしょう。

手洗いは水かぬるめのお湯で

手洗いは、肌の保護のため、水かぬるめのお湯でなさってください。冬で寒くてお湯を使う場合は、熱すぎると手の皮脂を奪い、肌のバリア機能を低下させてしまうため、ぬるめのお湯を使用するようにしましょう。

市販薬でかゆみを軽減

市販薬でかゆみを軽減するには、ステロイド外用剤が有効です。 ステロイド外用剤は、かゆみを抑え、強い抗炎症作用があります。ひび割れが目立つ場合は、クリームよりも刺激の少ない軟膏が適しています。

ステロイド外用剤は、症状に合わせて適切な強さのものを選ぶ必要があります。 自分の症状に適した薬がわからない場合は、薬剤師に相談しましょう。 市販薬を使用しても改善が見られない場合はクリニックを受診してください。

まとめ

手のひらかゆみが続く場合は、手湿疹のこともありますが、他の病気の場合もありますので、自己判断せず、お近くの皮膚科を受診し、適切な治療を受けるようにしましょう。

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