それは花粉皮膚炎かもしれませんね。
どんな病気ですか?教えてください!!
みなさん、こんにちは。皮膚科医の玉城有紀です。
皆さんは花粉症を持っておられますか?
鼻水が出たり目が痒くなるので仕事にも支障がでますよね。
5人に1人が発症する国民病とさえ言われています。
日本では1961年にブタクサ花粉、1963年にスギ花粉が初めて報告されました。
春はスギ、ひのき、夏はイネ科、秋はブタクサ、ヨモギなど季節によって異なる花粉が飛んでいます。
アレルギーを引き起こす原因となるアレルゲンが体に侵入してきて早ければ15分~30分ほどでアレルギー反応が起こるため「即時型」とも言われているんです。
今日お話する内容です。
1花粉皮膚炎
花粉症というと、くしゃみ・鼻水・目のかゆみが代表的ですが、実は「花粉皮膚炎」といって花粉の時期の起こる皮膚トラブルがあるのはご存知でしたか?
花粉皮膚炎とは皮膚が花粉と接触して、まぶた・頬・首にかゆみや赤みが起こる病気です。なので毎年同じ季節に顔が痒くなるとおっしゃる方がいます。
夏はイネ科のカモガヤ・オオアワガエリ、秋はブタクサ・ヨモギで花粉症を発症するので、花粉症は1年中起こり得る症状なのです。
昔と違って道路が舗装されたため、アスファルトの地面は花粉を吸収しません。
ですから落ちた花粉が何度も舞い上がって花粉を吸い込みやすくなったことも、花粉症の方が増えた原因です。
花粉症がある方はもちろんのこと、実は鼻水・目のかゆみといった花粉症がなくても皮膚が敏感なり痒みや赤みを起こす花粉皮膚炎を起こすことがあります。
なのである時期になると鼻水や目のかゆみはないけど、花粉がつきやすい場所の皮膚が乾燥したり、肌荒れを起こすっていう方は花粉皮膚炎なのかもしれません。
2なりやすい人
花粉皮膚炎はバリア機能が低下して外的刺激に敏感になった皮膚で起こりやすいです。
花粉がついて痒いので目をこすったり鼻のかみすぎで鼻下が真っ赤になってしまうと、その傷ついた皮膚に花粉が付着して花粉皮膚炎になることもあります。
3花粉食物アレルギー症候群
意外に知られていないもので、花粉症をお持ちの方が野菜や果物を生で食べた10分後くらいに唇・口・喉などにイガイガ感やかゆみ・腫れなどアレルギー症状を引き起こす口腔アレルギー症候群(Oral allergy syndorome-OAS)に「花粉–食物アレルギー症候群」というのがあります。
これは花粉症と食物に含まれているタンパク質が似ていることが原因です。
免疫のシステムが食べた食品を「花粉だ!」と間違って認識しちゃうため起こるのです。
花粉と関係がある代表的なものはこちらです。
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- スギやヒノキ▶トマト
- ハンノキやシラカンバ▶リンゴ・もも・さくらんぼ・アーモンド・豆乳・マンゴー・イチゴ・メロン
- ブタクサ▶メロン・スイカ・きゅうり・バナナ
- ヨモギ▶セロリ・ニンジン・マンゴー
- カモガヤ▶トマト・メロン・スイカ・じゃがいも・キウイ・オレンジ・ピーナッツ
4検査
もっとも代表的な検査は採血で行うView39です。
自分でIgE抗体検査を選んでもいいのですが、3割負担の健康保険では13項目しか選ばないのに対し、View39はその名の通り39項目のアレルギーを一気に調べることができます。
お値段は5000円くらいです。
皮膚科や耳鼻科でも検査ができます。
採血で花粉にアレルギーがなくても、細かい微粒子の接触でも花粉皮膚炎は起こるので、血液で花粉症に反応しなかった場合でも残念ながら花粉皮膚炎は起こるのです。
5温暖化と花粉
スギの雄花は冬に冷え込みが厳しいと休眠打破(きゅうみんだは)が進み、休眠から目覚めた後は暖かいほど開花が早くなる傾向があります。
1月前半でもスギ花粉がわずかに飛んでいる地域があることが確認されました。
そのため暖かい日特に最高気温が15℃以上になるような日は2月初旬でも要注意です。
また温暖化で開花時期も早まることで長い期間花粉が舞うことになってしまいます。
気温がグッと下がる日でも前日の気温が高い場合は、開いたままの雄花(おばな)から花粉が飛び出す傾向がありますのでご注意ください。
6治療
赤みが強いときはステロイドを塗りますし、かゆみを抑えるために抗アレルギー薬を飲んだりもします。
花粉皮膚炎がなくても目がかゆい・鼻水など花粉症の症状が出ている場合は、花粉症の治療を行うことで花粉皮膚炎の症状を和らげることもできます。
痒みが辛い場合は、ノイロトロピン・ヒスタグロビンという注射を週1~2回の頻度で計6回程度使用するのもおすすめです。
効果が現れるまでに3~4週間ほどかかりますので、花粉症状が出始めるより少し前に注射を始めるのがおすすめです。
たまに花粉症注射でステロイドを注射するクリニックもあります。ステロイドには強力な抗炎症作用があって、1回の注射で2~3ヶ月効果が持続しますが、感染症、胃潰瘍、緑内障、生理異常、脂肪萎縮など重大な副作用もあるので、日本耳鼻咽喉科学会でも、「アレルギー性鼻炎の治療にステロイド注射を用いることは推奨しない」と声明を出していますのでご注意ください。
7気をつけること
保湿:バリア機能を高めて花粉が肌につかないようにする&角質層の乱れを整える。
服装:特に目の周りが花粉皮膚炎を起こしやすいので、メガネ・マスク・帽子を使って目や頬への花粉の接触を減らす。