治療に加えて家のダニを退治しないといけませんよ。
どうしたらいいんですか?
みなさん、こんにちは。皮膚科医の玉城有紀です。
今日お話する内容は, 家の中にいるダニについてです。
1 ダニの発生について
ダニは羽がないので行動できる範囲は実は限られているのです。
だいたい3つのルートで侵入すると考えられています。
①風
細かいホコリやちりと一緒に入ってきます。
たとえば換気したときに窓から入ってきたり、外に干してある洗濯物にくっついて家の中に入ってきます。
②人やペット
電車やバスなどの乗り物の座席、外出先のソファに座ったりすると、洋服にくっついてきて家の中に入ってきます。
あとは散歩したときにペットの毛にくっついて家の中に入ってきたりもします。
③物
ネット通販で買い物したときのダンボールや、購入した衣類にくっついて家の中に入ってきます。
2 ヒョウヒダニ
国内には約2000種類のダニが生息しています。そのうち家の中に生息するダニは40~50種類いますが、主なものは3種類で、チリダニ・コナダニ・イエダニです。
この中でも8割を閉めるのがヒョウヒダニ(チリダニの仲間)です。
人を刺すことはないのですが、人の垢・フケなどの動物性タンパク質を食べて1年中います。
人の血を吸うわけではないので、家の中にたくさんいたとしてもその存在に気づきにくいのです。
ヒョウヒダニが発生する原因は主に以下の3つです。
・温度が20~30度
・湿度が70%以上
・栄養素が豊富な環境
この環境がそろうとダニの発育スピードが急激に高まってしまいますので、みなさんもよく覚えておいてくださいね。
「温度」「湿度」「エサ」の3つですよ!!
チリダニが好む温度20℃~30度、湿度70%以上、フケや垢、食べこぼしなどの栄養がたくさんある場所といったら、どこが思い当たりますか??
布団・じゅうたん・ソファ・枕です。
まずは発生しているチリダニを駆除するために、布団カバーやシーツは洗濯をしましょう。
布団自体は厚みがあって洗濯の水流だけだと簡単に駆除できないので、60℃以上の「高温洗濯」をするか布団乾燥機を使ってください。
ダニを駆除したら、アレルゲンとなるヒョウヒダニのフンや死骸を除去することが大切です。
具体的には掃除機で吸い取る方法が効果的です。
「チリダニ駆除」と「アレルゲン除去」が終わったら、「チリダニ予防」もしていきましょう。
先ほどご説明した3つのチリダニが好む条件に焦点を当てて予防することが大事です。
では具体的にはどのようにしたらよいのでしょうか。
まずは湿気が多いとよくないので、風通しをよくするために部屋をできるだけ換気するようにしてください。
またチリダニが発生する栄養源を取り除くために、シーツをこまめに取り換えたり、カーペットや布団はできるだけ洗うようにしたりしましょう。
カーペットは裏側まで掃除機をかけるのがコツです。
ダニが繁殖しやすいのは梅雨以降の多湿な時期なので、湿度を60%以下に保つようにエアコンの除湿機能を使っったり窓を開けて換気をしてください。
防ダニシーツや防ダニマットレスなど便利アイテムを使った予防法もあるので、より効果的に予防したい方は使用してみてもいいかもしれません。
換気の悪い押入れやクローゼット・タンスも湿気が溜まりやすくてダニが多いところなので、四隅までしっかり掃除機をかけましょう。
あとは子供部屋です。
子供部屋って物が多くて片付けや掃除が行き届かないですし、ぬいぐるみがあるのでダニが発生しやすいのです。
3 コナダニ
コナダニというのは、台所などの湿気の多い場所に現れやすいダニです。
その名前の通り、小麦粉などの食品袋の中で大量に繁殖する厄介な害虫です。
コナダニは小麦粉以外にも、チョコレートなどの菓子類、砂糖や味噌などの調味料、削り節や煮干、乾燥果実、ワラなどを餌にしています。
コナダニの大きさは0,5ミリくらいです。
繁殖すると白い粉末状に見えますが、よく観察していると粉が動いているように見えます。
閉まっておいた小麦粉を使おうとしたら粉が動いていて、よく見たらコナダニだったということもあります。
発生してしまった場合、コナダニは高温に比較的弱いため煮沸したり、天日で乾燥などによって死滅させることができます。
そして食品をできるだけ10℃以下に保存することで増殖を抑えることができます。
コナダニ自体は人を刺しませんし無害な害虫なのですが、原因を放置したまま大量発生させてしまうと、お次にお話するツメダニを発生させてしまうので要注意です。
4 ツメダニ
ツメダニは吸血はしませんが人を刺すので、刺されると皮膚が赤くかゆくなることがあります。
ツメダニは捕食性のダニで動きが速くチリダニとかコナダニなど他のダニをエサにします。
ツメダニの被害が多いのは8~9月ごろなのですが、ツメダニのエサであるヒョウヒダニやコナダニが8~9月に増殖するので一緒にツメダニも増殖していきます。
ツメダニの寿命は3~4カ月ほどで、生涯に100個ほど産卵します。
卵は1~2週間で孵化するため繁殖力は旺盛です。
ツメダニが人を刺すのは吸血するためではありません。
ヒョウヒダニやコナダニなどを食べるとき間違って人を刺してしまうのです。
ツメダニは吸血することはありませんが体液を吸うので、ツメダニの唾液が侵入して皮膚に腫れやかゆみを起こします。
ツメダニはイエダニと違って水ぶくれにはなりません。イエダニは吸血するので血管近くの柔らかい場所を狙って刺すのと刺されたところが水ぶくれになるので、見分け方のポイントになります。
5 舌下免疫療法ミティキュア
ダニによってくしゃみ・鼻水・鼻詰まり・目が痒いのが酷いと、生活の質が落ちますし、抗アレルギー薬だと眠くなってしまう方が、この治療に取り組まれています。
治療前にはダニによるアレルギーがあることを採血で確定診断をつけてから始めます。
5歳以上のお子さんに治療ができます。
この治療をすると長期に渡って症状が抑えられますが、治療期間が3~5年と年単位でも治療が必要です。
気をつけなければいけないのが、アレルゲンを投与するわけですので、アレルギー反応が起こる可能性があります。場合によってはアナフィラキシーといって、蕁麻疹・腹痛・吐き気・息苦しさ・意識の低下などのショック状態が起こることがあります。
ですから適切な対応ができるクリニックでのみ処方されます。
気になる方はお近くのクリニックを受診なさってみてくださいね。
動画でも解説していますので、是非ご覧ください。