こんにちは。皮膚科医の玉城有紀です。
アナフィラキシーとは
アナフィラキシーは、アレルギーを引き起こす物質が体に入ることによって急激に、短時間(数分から数十分以内)に全身のさまざまな臓器にアレルギー症状が起こり、命の危険が生じることをいいます。

もともと異物から体を守る仕組みである免疫が過剰に働くことで、かゆみやくしゃみなどが起こります。

アナフィラキシーの症状
- 皮膚症状:充血、全身が真っ赤になる、口の中が腫れる、唇が青白くなる
- 呼吸症状:鼻が詰まる、声がかすれる、ゼーゼーして呼吸が苦しくなる(呼吸困難)
- 消化器症状:お腹が痛い、吐く、下痢
- 心臓の症状:動悸、血圧低下、ショック、失神など。意識が朦朧とすることもあります

アナフィラキシーの原因
約70%が食物によるもので、卵・牛乳・くるみ・小麦・落花生などが代表的ですが、原因となる食物は年齢によって異なります。
次に多いのが約12%を占める医薬品によるもので、造影剤・抗生剤・ワクチンなどが原因となることが多いです。
蜂に刺されて起こるアナフィラキシーは約4%程度で、アシナガバチ・スズメバチ・ミツバチの順に多く、蜂が活発になる夏は特に注意が必要です。

そのほか、天然ゴム手袋などのラテックスによるものや、特定の食べ物を食べたあとに運動をすることで起こる「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」もあります。
アナフィラキシーが起きたら
ご自身やご家族がエピペンやネフィーなどのアドレナリンを投与し、すぐに救急車を呼んでください。

ぐったりしている場合は仰向けに寝かせ、足を少し高く上げます。吐いている場合は、窒息しないよう横向きに寝かせてください。
アナフィラキシーが起きてから呼吸停止や心停止に至るまでの時間は、薬によるものが約5分、蜂によるものが約15分、食べ物によるものが約30分といわれています。一方で救急車が到着し病院に到着するまでには45分ほどかかるため、それでは間に合わない可能性があります。

また、症状が出てから30分以上経ってから使用するなど、アドレナリンの投与が遅れると、一度症状が良くなってもまた症状が現れる「二相性反応」が起こる可能性があるため、症状が出たら早めに使用することをおすすめします。
エピペンとは
エピペンは2003年から処方できるようになった、太ももの筋肉に注射するタイプのアドレナリン自己注射薬です。針は見えない構造になっています。

エピペンの使い方
- 上の青色のキャップを外す
- 太ももの外側に垂直に刺し、「カチッ」と音が鳴るまで強く押し付ける
- 注射が終わると、オレンジ色の針カバーが伸びたままになる
- 服の上からでも注射が可能

ドキドキしても15分程度で元の状態に戻るように、エピペンを打った場合も10分後に血中濃度が最大になり、40分ほどで半分程度まで下がります。

使用量は体重によって異なり、15kg以上30kg未満の方は0.15mg、30kg以上の方は0.3mgを使用します。
【 体重による使い分け】
|
体重区分 |
ネフィー (点鼻) |
エピペン (注射) |
|
30kg以上 |
2mg 製剤 |
0.3mg 製剤 |
|
15kg〜30kg未満 |
1mg 製剤 |
0.15mg 製剤 |
エピペンとネフィーの違い
2026年2月には、注射ではなく点鼻タイプのアドレナリン製剤「ネフィー(neffy)」も発売されました。どちらも体重15kg以上の方にのみ処方が可能です。
| 項目 | ネフィー(点鼻) | エピペン(注射) |
|---|---|---|
| 投与経路 | 点鼻(鼻の中にスプレー) | 筋肉注射(太ももに打つ) |
| 針の有無 | なし(痛くない) | あり |
| 投与部位 | 鼻腔(鼻の穴の奥) | 太ももの前外側(服の上から可) |
| 保管方法 | 常温(1〜30℃) | 常温(15〜30℃) |
| 2回目投与 | 10分後以降(同じ鼻の穴) | 5〜15分後以降(別の場所) |
| 有効期限の目安 | 12〜18ヶ月程度 | 約18ヶ月程度 |
| 発売 | 2026年 | 2003年 |
| 教職員など第三者使用 | 現時点では不可 | 可能 |
エピペンの注意点
- 太ももに垂直に:太ももの外側に「カチッ」と音がするまで強く押し当て、数秒保持します
- 親指をかけない:青い安全キャップを外すときや打つときに、誤って自分の親指を針の方(オレンジの先端)にかけないよう注意してください
- 使うべき症状:息苦しい・喉が締め付けられる・全身蕁麻疹・意識が遠のくなどの症状があれば使用し、効果が不十分なら追加投与します。常に携帯するようにしてください
- 期限切れをチェック:処方されてから1年半ほどは使用できますが、有効期限を過ぎると効果が保証されません。誕生日など決まった日に確認する習慣をつけましょう。処方時にアプリやはがきで登録すると、使用期限の1ヶ月前にお知らせが届きます
- 使用後や期限切れのもの:医療廃棄物のため、処方されたクリニックに持参してください

薬を使って症状が一時的に良くなっても、数十分後にまた症状がぶり返すことがあります。「打ったら(スプレーしたら)即、119番」は絶対のルールです。
エピペンは誰が打つのか
本人がショック状態で自分で注射できないこともあります。発売当初は本人またはご家族のみ使用可能とされていましたが、緊急時であることを踏まえ、平成20年3月には学校の先生が注射できるようになり、平成21年3月には救急救命士も使用できるようになりました。
ただし、あくまで自分に処方されたエピペンであることが大前提で、他人に処方されたエピペンを使用することはできません。
1本あたりの自己負担額は3割負担の方で約3,000〜4,500円です。もし2回目を打つ場合は、10分後に別の場所に打ちます。
処方の流れ
問診と説明を受けたのち、毎回同意書を記入して処方箋が発行されます。処方箋を薬局に提出すると薬局が発注するため、処方された当日に受け取ることはできず、後日の受け取りとなります。

すべてのクリニックで処方できるわけではなく、エピペンの登録医でないと処方ができません。受診前に、処方が可能かどうかクリニックへお電話でご確認ください。
まとめ
今回は、アナフィラキシーの症状・原因・対策とエピペンについてお話ししました。
アナフィラキシーは命に関わることもある症状ですが、正しい知識と備えがあれば、いざというときに落ち着いて対処できます。エピペンを処方されている方は、使い方と使用期限を定期的に確認しておきましょう。
