みなさんこんにちは。皮膚科医の玉城有紀です。
このブログは、皮膚の病気で悩む患者さんに正しい知識を広めていくために、現役の皮膚科医としての経験をもとにお届けしています。
今日は「白斑(はくはん)」について。
白斑とは?、白斑の主な原因、白斑の種類、白斑の症状と進行スピード、白斑の治療法、白斑の予防とセルフケアについてひとつずつ答えていきたいと思います。
白斑とは?
これは、肌の色素を作るメラノサイトが破壊され、色が作れなくなるために起こります。
中でも「尋常性白斑」は最も一般的で、全人口の0.5~2%に発症するとされ、白斑全体の約60%を占める代表的な疾患です。その特徴は、境界が明瞭な白い斑点が顔面、指趾、手足、首など様々な部位に現れることです。白斑部の毛髪も通常白くなります。
原因は不明な点が多いですが、自己免疫によるメラノサイトの破壊、酸化ストレス、遺伝因子などが関与する可能性が高いとされています。精神的ストレスも発症や悪化に関連する場合があり、ときに物理的損傷後に生じることもあります。白斑は他人にうつる病気ではなく、生命を脅かすものではありませんが、見た目の問題から患者に心理的な影響を与えることがあります。早期治療開始が改善につながりやすいとされます。
白斑の主な原因
白斑の原因は一つではなく、いくつかの要因が関わっていると考えられています。代表的なものは以下の通りです。
自己免疫異常
白斑は、皮膚のメラノサイト(色素細胞)の欠損によって、様々な大きさの脱色素斑が生じる病態です。その主な原因の一つに、自己免疫の異常が挙げられます。
これは、本来、自己を守るはずの免疫細胞(抗体やリンパ球)が誤ってメラノサイトを攻撃し、破壊してしまうことで発症すると考えられています。実際に、一部の患者ではメラニンに対する抗体が確認されます。
白斑患者の最大30%で、他の自己免疫性疾患を合併することがあります。これには、甲状腺機能亢進症(バセドウ病)、甲状腺機能低下症(橋本病)、アジソン病、糖尿病、悪性貧血などが含まれ、特に甲状腺疾患との関連が最も強いとされています。

白斑の根本的な原因は不明な点が多いものの、自己免疫によるメラノサイトの破壊が有力な病因説として広く認識されています。
遺伝的要因
白斑は家族性(遺伝性)に生じる場合があり、この場合、常染色体優性遺伝の形式をとることがあります。
特に、尋常性白斑のタイプの一つである非分節型では、遺伝的な影響が関与していると考えられています。最近では、自己免疫性白斑の疾患感受性遺伝子に注目が集まっており、その解析が進められています。
先天性の白斑では、眼皮膚白皮症のように病因遺伝子が特定されているものもありますが、結節性硬化症では原因遺伝子(TSC1, TSC2)は同定されているものの、白斑の病態自体はまだ不明な点が多いです。このように、白斑の発症には複数の遺伝子が複雑に関わっていることが示唆されています。
ストレス・外的要因
精神的ストレスは、白斑の発症と関連すると患者が感じることがあり、過度のストレスが血液循環の悪化や自律神経のバランスの乱れを通じて、白斑の症状を拡大・悪化させる可能性が示唆されています。
また、皮膚への直接的な物理的損傷も要因となり得ます。
さらに、特定の化学物質への曝露も原因となることがあります。
これらの要因は、皮膚の色素細胞であるメラノサイトに影響を与え、白斑の病態に関与すると考えられています。
白斑の種類
白斑にはいくつかの種類があり、それぞれ特徴や発症の仕方が異なります。
尋常性白斑
肌の色が白く抜けてしまう「白斑」の中でも最も頻度が高いタイプであり、全人口の0.5~2%に発症すると推定されています。
病型は、神経の支配領域に関係なく見られる非分節型と、身体の片側に生じる分節型などに大きく分けられ、非分節型が最も多く見られます。
尋常性白斑の根本的な原因は完全には解明されていませんが、最も有力な説は自己免疫によるメラノサイトの破壊です。その他にも、遺伝因子、酸化ストレス、精神的ストレス、皮膚への物理的損傷(日焼けや摩擦など)、特定の化学物質への曝露などが発症や悪化に関与すると考えられています。明らかな遺伝形式は存在しませんが、20~30%の尋常性白斑の患者さんに家計内発症が見られるので、遺伝的な関与があると言われています。
尋常性白斑は他人にうつる病気ではなく、生命を脅かすものではありませんが、見た目の変化が患者に心理的な影響を与えることがあります。症状に気づいたら、早期に医療機関を受診し治療を開始することが、色素再生や進行抑制につながりやすいとされています。
老人性白斑

この白斑は、主に光がよく当たる部位に現れることが特徴で、皮膚の色素細胞であるメラノサイトの働きが低下することによって発生します。
症状としては、小さな白い斑点が生じ、その境界は不明瞭であることが特徴です。これらの斑点は年齢とともに数が増加する傾向にあります。
しかし、老人性白斑は目立ちにくいため、患者自身がその存在に気づいていないことや、特に気にされないことも少なくありません。
大きくなることはないとされており、尋常性白斑のように拡大していくことはありません。生命を脅かす病気ではなく、見た目の問題も比較的小さいことが多いです。皮膚科での診察により、他の脱色素性疾患と鑑別されます。
脱色素性母斑
これは、生まれつき存在する白いあざとされており、先天性、または生後すぐに現れる白斑として分類されます。
しかし、生まれた直後にその存在が認識されることは少なく、多くは3歳くらいまでにはっきりしてくることが多いとされています。
脱色素性母斑の大きな特徴は、大きさが拡大することがない点です。また、病変の数が増えることもありません。ただし、身体の成長に伴って、白い部分が相対的に大きく見えることはあります。
これは、徐々に拡大する可能性のある尋常性白斑など、他の後天性白斑とは異なる性質を持っています。
白斑の症状と進行スピード
白斑は進行の仕方によって大きく2つのタイプに分かれます。
症状とタイプ
非分節型
この病型は、神経の支配領域とは関係なく、身体の左右両側に対称的に白い斑点が出現するのが特徴です。顔面(特に開口部周辺)、指趾、手足、首、腋窩、鼠径部など、全身のどの部位にも生じる可能性があり、特に皮脂腺が発達した脂漏部位や、日焼けや摩擦などの物理的刺激を受けやすい部位に好発する傾向があります。白斑部の毛髪も白くなることがよく見られます。
非分節型は、比較的症状が落ち着いている時期と、白斑が拡大したり新たに発生したりする時期を繰り返しながら、徐々に進行していくことが多いです。最終的に全身の広範囲に及ぶことも珍しくありません。
その原因は、自己免疫によるメラノサイト(色素細胞)の破壊が最も有力な説とされており、遺伝因子や酸化ストレス、環境因子なども関与すると考えられています。全身の3%以上に病変が広がる非分節型尋常性白斑の治療では、光線治療のエキシマや、範囲が多ければ、全身型のナローバンドUVB療法が第一選択となることがあります。
分節型
境界が明瞭な白い斑点として現れ、通常は限局的な範囲に留まります。白斑の全タイプの中で、非分節型よりも発生頻度は低いとされています。
この病型の原因はまだ不明な点が多く、分節型白斑は、比較的病変が安定していることが多いです。
治療法としては、分節型の尋常性白斑に対しては、ステロイド外用剤や免疫抑制剤の外用剤が第一選択として利用されます。薬物療法で効果が見られない、比較的安定した限局例の場合には、外科的治療(例えば皮膚移植術)も検討されることがあります。
進行スピードは?
白斑の進行スピードは、白斑のタイプや個々の症例によって大きく異なります。
その進行のスピードは一様ではなく、基本的には時間をかけて少しずつ拡大していくことが多いですが、まれに急なスピードで拡がっていくケースも存在します。
尋常性白斑で最も頻度の高い非分節型は、比較的症状が落ち着いている時期と、白斑が拡大したり新たに発生したりする時期を繰り返しながら、徐々に進行していく傾向があります 。最終的に全身の広範囲に及ぶことも珍しくありません。
一方、脱色素性母斑や老人性白斑は、大きくなったり数が増えたりすることはありません
白斑の治療法
白斑の治療は一律ではなく、症状や進行度に応じて選択されます。以下の方法が代表的です。
外用薬
主な外用薬には以下の種類があります。
- ステロイド外用剤:初期段階や軽度の白斑に用いられ、色素再生が期待できます。強力なステロイドが第一選択となることがありますが、長期使用は周囲の皮膚の色素減少や萎縮を引き起こす可能性があります。
- 免疫抑制剤の外用剤:ステロイド外用薬による有害作用の好発部位(顔面や鼠径部など)での治療に使うことがあります。これはプロトピック軟膏というものになります。
- 活性型ビタミンD3の外用剤:オキサロール軟膏、ボンアルファ軟膏などが使用されます。
ただ、外用薬は、効果を認めるのに数カ月を要することがあり、多くの場合、光線療法など他の治療法と併用されます。
内服薬
副腎皮質ステロイド(錠など): 白斑の進行を抑える目的で、短期間使用されることがあります。進行性の尋常性白斑に対して行っても良いとされています。しかし、長期間の内服は免疫力低下や血圧・血糖値の上昇などの全身性の副作用のリスクがあるため、いずれも広く一般に浸透しているとは言い難く、推奨度も比較的低くなっています。

光線療法
白斑の光線治療は、尋常性白斑において重要な選択肢です。
- ナローバンドUVB (NB-UVB) 療法:311nm付近の特定の波長の紫外線を照射します。成人の尋常性白斑の第一選択とされ、全身の3%以上の非分節型白斑に推奨されます。免疫反応や細胞増殖を抑え、50~70%の患者で75%以上の色素再生が見られます。通常、週2回程度の通院で半年ほど効果判定にかかります。
- エキシマ療法:308nmの光を限局した病変に照射するターゲット治療です。色素再生能力に優れ、週1~2回、20~30回照射し効果を評価します。
カバーメイク
白斑のカバーメイクは、特に顔など人目に触れる部位に白斑がある場合に有効な対処法です。見た目による心理的・社会的な苦痛を軽減し、生活の質の改善を目的として行われます。
この方法では、白斑専用のカモフラージュ化粧品を使用し、色調の差をカバーします。グラファのダドレスシリーズなどが使われ、特にダドレスは角質層に浸透し、洗っても色が落ちにくい特徴があります。
手術療法
白斑の手術療法は、外用薬や光線療法などの薬物治療で効果が見られない、比較的安定した限局例に検討される治療法です。特に、1年以内に症状の進行が見られない症例に対して、見た目が気になる方問題となる部位に限定して行われます。どのように手術するかというと、自分の皮膚を白斑部に移植する方法になります。
白斑の予防とセルフケア
白斑は、セルフケアや市販薬で改善することは難しいため、症状に気づいたら早めに皮膚科を受診し、治療を開始することが重要です。
日常生活では、白斑部は色素保護がないため紫外線により悪化しやすく、周囲の皮膚が日焼けするとコントラストが強くなります。そのため、紫外線対策は徹底すべきです。

まとめ:白斑は早めの対応がカギ!
白斑は早期の対応が非常に重要です。市販薬で改善することは難しいため、症状に気づいたら速やかに皮膚科を受診することが強く推奨されます。
これは、早期に治療を開始するほど治療への反応性が高まり、白斑の拡大を防ぎ、色素再生につながりやすいためです。白斑には複数のタイプがあり、適切な診断を受けることで、その病型に合わせた最適な治療法を選択できます。
例えば、限局した白斑には外用薬が、広範囲にはナローバンドUVB療法が第一選択となることが多いです。急速に進行する症例では、短期間のステロイド内服が検討されることもあります。
このように、早めの受診と根気強い治療継続が、見た目の改善と患者さんの心理的負担軽減の鍵となります。白斑は自然治癒しないため、早期対応が不可欠です。
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