水ぶくれの原因となる虫はいろいろいますから
よく調べてみないとですね。
そうなんですか!?
みなさん、こんにちは。皮膚科医の玉城有紀です。
虫刺されって皆さんも経験されたことありますよね。
虫刺されは蚊・ブヨ・ダニ・ノミ・毛虫・蜂、ムカデ等によって起きる皮膚炎のことで「虫刺症」(ちゅうししょう) と言います。
大体2日くらいで自然に治りますが、かき壊してしまったり刺した虫の種類によっては水ぶくれができてしまいます。
1 水ぶくれの原因
水ぶくれは医学的には「水疱」と言います。
靴ずれを起こしたときや細菌感染を起こしたときにできますよね。
この水ぶくれは虫刺されでも起こります。
どうして虫刺されで水ぶくれが出来るかというと虫の持つ毒液による科学的刺激によって皮膚の細胞が傷つけられるので水ぶくれができます。
他にも虫が吸血するときに注入した成分に対するアレルギー反応、つまり体内に侵入した異物に対する防御反応で水ぶくれができます。
虫刺されによって水ぶくれができるかは、どの虫にさされたかよりは個人の体質によるものが大きいです。
同じ虫にさされても人によって赤みだけ出る人もいれば酷く水ぶくれになる方もいて、症状の出方には差があります。
2 虫刺されの症状
虫刺されの症状として代表的なものは以下のとおりです。
・赤くて痒い
・痛い
・水ぶくれ
・腫れる
3 虫刺されの原因
①蚊
国内に蚊の種類は130種類ほどですが、大体の虫刺されがヒトスジシマカかアカイエカ、チカイエカです。
蚊って血を吸うときに唾液を注入するので刺されたところが赤く腫れます。
症状がどのようにでるかはかなり個人差があります。
たまに蚊に刺されたところが赤く痒くなる以外に、血豆や酷いかさぶたや水ぶくれができてその傷跡が1ケ付き以上も残ることもあります。
他に熱が出たりリンパ節がはれた下痢がおこったりもします。
このような方は「蚊アレルギー」とか「蚊刺過敏症(ぶんしかびんしょう)」ともいわれ、かなり稀な病気ではあります。
②ブヨ
ブヨは小さいハエみたいな見た目をしていて蚊と同じように人の血を吸います。
キャンプ場や川で遊んだときにさされることが多いですね。
赤みやしこりが暫く残ることがあります。
③アブ
アブは蚊と違って皮膚を咬んで出てきた血を吸うので、さされたときは痛いです。
④ノミ
ノミはネコノミにさされた場合がほとんどです。
人を刺すことがありますので、ペットがいると室内でもさされることがあります。
ネコノミは2ミリ位の羽がない昆虫で、オスもメスも野良猫や犬の体に寄生して吸血します。
犬の体に寄生した場合は1~3週間、猫の体に寄生した場合は2~5週間生きます。寄生すると10分以内に吸血し翌日産卵します。卵が室内のカーペットなどに落ちると1週間以内に羽化して幼虫になります。
この幼虫はカーペット、ソファ、部屋のすみっこなどの湿気が高いところで脱皮してサナギになります。
サナギは湿度がある環境下だと数ヶ月生きて羽化し、成虫になり、猫や犬に寄生するのです。
ちなみに犬や猫に寄生している成虫の状態は、ノミ全体のたった5%しかなくて、卵・幼虫・サナギとして室内の中に存在している未成熟期のノミが全体の95%を占めています。室内の掃除をすることがいかに大切かがおわかりいただけると思います。
他にもメスが公園などの土があるところに卵を生むと、1週間位で幼虫になってじきに成虫になります。
公園で遊んだ時に成虫が人間の皮膚に飛びついて吸血すると、1~2日経ってから赤いぶつぶつができます。
膝から下を刺されることが多いです。
かなり痒いのですが、かいていると水ぶくれになります。
⑤ダニ
室内で刺されるダニはほとんどがイエダニです。
お腹・二の腕など服で隠れているところが刺されやすいです。
イエダニはネズミに寄生しているので、ネズミが住み着いている古いお家やマンションにはイエダニが出やすいです。
それに対してマダニは屋外で刺されます。
マダニはキャンプ場で刺されている方が多いです。
マダニは数日皮膚にくっついています。これを無理に引っ張って取るとマダニの尖った牙だけ皮膚の中に残ってしまうことがありますので、マダニが皮膚にくっついているのを見つけたら自分で引っ張らずにお近くの皮膚科を受診なさってください。
⑥蜂
人を刺す蜂はミツバチ・スズメバチ・アシナガバチの3種類です。
蜂に刺されると蜂毒の刺激作用によって、強い痛みがあり赤く腫れて水ぶくれができることがあります。
ほとんどの場合が刺されてから30分以内にかゆみ・蕁麻疹・吐き気・むくみがおきてからアナフィラキシーショックになります。
「数時間前に蜂に刺されたけど、アナフィラキシーになりますか?」と心配される方がおられますが、歩いて外来にお越しになられている場合は大丈夫です。
⑦ムカデ
ムカデは牙で皮膚を咬んで毒成分を注入しますので、強い痛みや赤み、腫れが起きます。
噛まれたところから線状に症状が出ることもあります。
蜂と同じようにアナフィラキシーショックを起こすこともあります。
⑧毛虫
毛虫にはハリに毒があり、特に有名なのがチャドクガです。
ツツジや椿の庭木にいますので、庭仕事のときに毛虫に触れてしまう方も多いです。
毛虫に触ると赤いぶつぶつができます。
刺されたところをかいてしまうと肌に刺さった毛虫の毛をさらにこすりつけてしまい、広がっていきますので絶対にしないでください。
毛虫に触れてしまったときはテープで皮膚についた毛虫のハリやトゲを取ってから、シャワーで洗い流してください。
4 水ぶくれの対応
水ぶくれができてジュクジュクしているときは消毒はしないでまずは石鹸で洗ってください。
子供の場合は「かかないで!!」と言っても我慢出来ずに掻きむしってトビヒになったりもしますので、早めにお近くの皮膚科を受診なさってくださいね。
5 シミになる理由
虫刺されはうまく治せないとシミのような色が残ります。
虫にさされたときに炎症後の色素沈着になるのは早く治療をしないからなのです。
炎症後の色素沈着はにきびの跡や日焼け、擦り傷の跡でも起こります。
皮膚に炎症が起きると組織が傷つきます。傷ついた組織を修復する過程でメラノサイトが活性化するとメラニン色素が作られ色素沈着になります。
通常は皮膚はターンオーバーによってシミは消えていきますが、消えるのに1年以上かかることもあります。
特に大人になると肌のターンオーバーが遅くなり、痕になりやすいです。
虫にさされたときは炎症を早く抑えるためにステロイドを塗ることが大切ですし、紫外線対策もしっかりしてもらいます。
炎症がおきて赤くなっているところに日光を浴びてしまうと、メラノサイトが活発になってさらにシミになりやすくなります。
6 治療と予防
軽症なら市販のかゆみ止めでも大丈夫ですが、赤みやかゆみが強いときはステロイドの外用やアレルギーを抑える飲み薬が必要です。
ただ、治療は皮膚症状を抑えるだけになります。
原因となる虫が身近にいるとまた刺されてしまいますので、まずは怪しい虫には近づかない・触らないことです。
なにかに刺されたと思ったら、こすらず水で洗ってよく冷やしましょう。
虫は基本的には光を好むので、窓を開けたまま寝たりしないで網戸を活用しましょう。
最近は海外から様々な生き物が国内に侵入しています。
毒グモのセアカゴケグモなどがそうです。
これは噛まれるとかなり痛くて、筋肉痛・吐き気・下痢、頭痛などの全身症状を起こします。
あとは輸入コンテナなどから国内に入ってきたヒアリも、蜂と同じく毒針があります。
刺されるとアナフィラキシー症状を起こすことがあります。
気になる方はお近くの皮膚科を受診なさってみてくださいね。
動画でも解説していますので、是非ご覧ください。