

糖尿病について、肌の状態からも糖尿病がわかること
があります。今回は初期症状をお話します。

よろしくお願いします!
みなさんこんにちは。皮膚科医の玉城有紀です。
何年間も血糖の濃度が高いままで放置してしまうと血管が傷ついてしまい、将来的に心臓病や失明·腎不全といったより重い病気に繋がります。
今日は意外と知られていない糖尿病をお持ちの方がなる足の皮膚症状についてお話します。
足の甲がかゆい!糖尿病で発症する皮膚症状とは?
糖尿病とはインスリンがうまく働いてくれないので、血液中を流れるブドウ糖が増える病気です。何年間も血糖の濃度が高いままで放置してしまうと血管が傷ついてしまい、将来的に心臓病や失明・腎不全といったより重い病気に繋がります。実は糖尿病は皮膚症状との関係がとても高い病気です。たくさんの患者さんが皮膚の乾燥やかゆみ、手足の感覚が弱くなる、切り傷が治りにくいなどの肌トラブルに悩まされています。
今回は、糖尿病があったり血糖値が高くなっているときに体が発するサインのなかで、特によく皮膚科で見かける足に起こる症状にフォーカスしてお話をしたいと思います。
皮膚のかゆみ
まず1つ目は足が乾燥して痒くなることです。糖尿病をお持ちの方はどうして皮膚が痒くなるのでしょうか?糖尿病があると全身の血糖が高くなることで血液中の糖が尿にでます。
そのときに一緒に体の中の水分も排出されてしまい脱水傾向になるため皮膚が乾燥しやすくなります。また糖尿病があると神経の働きは弱くなり、汗の量を調整する自律神経の働きが阻害され汗をかきづらくなります。
皮膚は皮脂と汗で皮膚の表面に潤いを与えてバリア機能を作っていますが、バリア機能が低下すると皮膚がかさかさして痒みを引き起こします。
ひどくなるとステロイドを塗ったり抗アレルギー剤を飲んで痒みを止めることもあります。
痒いのでずっとかいてしまうと、そこが色素沈着で黒くなってきます。そうなるとなかなか色を消すのが難しくなります。
手足の痺れ
血糖が高い状態が続くと血管が傷んで血流が低下してしまい、神経に栄養や酸素がいかなくなってしびれが起こってきます。
はじめは正座をしたときのようなしびれとかぴりぴり、じんじんとか感じますが、人によって痛いと感じる方もいます。もっと進行すると手の指にも痛みやしびれが出てくることになります。しかも神経の働きがもっと鈍ってくると感覚自体が鈍くなり、今度は痛みを感じにくくなってしまうのです。そうなると見た目には皮膚が真っ赤になってめちゃくちゃ痛そうにみえても、本人はケロッとしていて「痛みはないのです」とおっしゃいます。こうなると傷があっても痛みがないので病院に来るのが遅れてしまい、非常に悪くなってから受診されます。最悪皮膚が壊死してしまい、足を切断する方もいらっしゃいます。
感染症の発症
バリア機能が損なわれた乾燥した皮膚や水虫などがあるとちょっとした擦り傷ができやすくなります。そこから細菌が入ってくると、糖尿病の方は足が腫れて蜂窩織炎や壊死性筋膜炎といった入院が必要な皮膚の感染症を起こしやすくなります。普通の方ならすぐに治るのですが、糖尿病をお持ちの方は傷が治りにくくてほんの小さな傷からでも悪化しやすく、最悪足を切断することにもなります。
水虫
糖尿病をお持ちの方の50%の方が水虫に合併されています。水虫かもと思ってても、放置してたりしていませんか?しかも水虫かもしれないって市販薬使ったりしてませんか?
水虫かどうかは皮膚科で顕微鏡で水虫がいるか調べないと分からないので、気になる方はお近くの皮膚科を受診なさってください
水虫は命に関わるものではないのですが、糖尿病をお持ちの方は命に関わることもあるのはご存知でしたか?水虫がいると指の間がジュクジュクして白くふやけてくるので、皮膚が脆くなってそこに傷ができてます。そこから別の細菌が入ってしまうと皮膚の感染症である蜂窩織炎を起こすことがあるのです。
たかが水虫とは思わないでください。
水虫になってしまった場合の効果的な薬の塗り方については別のブログで説明していますのでぜひチェックなさってください。

爪の異変
糖尿病になると、爪にも様々な変化が現れます。爪水虫になると爪が濁り、厚く脆くなります。また、爪甲層状分裂といって爪がガタガタと二重になる変化もみられます。糖尿病による血行障害では、足の指の毛がなくなり光沢を帯び、爪が伸びにくく厚くなり黄色になることがあります。糖尿病は様々な臓器に影響を与えるため、爪の変化は隠れた内臓疾患のサインかもしれません。
足のタコ
糖尿病の方は、足の血流が悪くなり、傷が治りにくいため、タコができやすいです。 また、神経障害により足の感覚が鈍くなるため、タコが大きく、厚くなってしまうことがあります。 通常のタコと異なり、糖尿病の合併症によるタコは、ギザギザとしたイボ状になることがあります。 大きなタコは、靴との摩擦で潰瘍になる可能性もあるため、注意が必要です。 糖尿病の方は、日頃から足の観察を行い、タコや傷を見つけたら、早めに医師に相談しましょう。
足の指先の異変
糖尿病になると、足の指先に様々な異変が現れます。血行不良や神経障害によって、傷が治りにくくなり、感染症のリスクも高まります。 また、足の感覚が鈍くなるため、小さな傷や異変に気づきにくく、重症化するケースもあります。 指先の皮膚が変色したり、潰瘍ができたり、壊疽を起こすこともあります。 早期の発見と治療が重要なので、足の指先に異変を感じたら、すぐに医師に相談しましょう。
Dupuytren拘縮
糖尿病は、Dupuytren拘縮のリスク因子の一つと考えられています。Dupuytren拘縮は、手のひらにある手掌腱膜が厚くなり、指が曲がったまま伸びなくなる病気です。 糖尿病によって血流が悪くなることや、代謝異常などが影響していると考えられますが、詳しいメカニズムはまだ解明されていません。 糖尿病の方は、Dupuytren拘縮の症状に注意し、早期に発見することが大切です。
水疱性類天疱瘡
糖尿病の方は、免疫機構が低下し、様々な感染症にかかりやすくなります。 近年、糖尿病治療薬であるDPP-4阻害薬と水疱性類天疱瘡との関連が指摘されています。 水疱性類天疱瘡は、高齢者に多く、全身に強い痒みを伴う赤みや水ぶくれが現れる自己免疫疾患です。 薬剤による水疱性類天疱瘡は、まだ不明な点が多いですが、DPP-4阻害薬の内服後に発症し、中止すると軽快する傾向があります。
糖尿病で皮膚のかゆみや乾燥が起こる理由
高血糖による脱水症状
糖尿病になると、高血糖によって血液中のブドウ糖濃度が高くなります。すると、浸透圧の関係で細胞内の水分が血管側に移動し、尿として排出されてしまいます。このため、体内の水分量が減少し、脱水症状を引き起こします。その結果、皮膚の水分も失われて乾燥し、かゆみを感じるようになります。
多尿による体内の脱水傾向
糖尿病では、高血糖状態が続くと、血液中の過剰なブドウ糖を体外へ排出するため、尿の量が増加します (多尿)。その際、体内の水分も一緒に排出されるため、体内の水分量が減少し、脱水傾向になります。 これが、皮膚の水分不足を引き起こし、乾燥やかゆみを引き起こす原因の一つとなります。
自律神経障害による発汗作用低下
糖尿病によって高血糖状態が続くと、 自律神経に障害が起きることがあります。自律神経は、体温調節や発汗など、体の機能を自動的に調整する役割を担っています。自律神経障害により、発汗が減少すると、皮膚表面の水分量が減少し、乾燥しやすくなります。 また、汗には皮脂膜を形成する役割があり、汗の減少は皮脂膜の形成を妨げ、さらに乾燥を悪化させ、かゆみを引き起こします。
糖尿病かもしれない方は足の皮膚をチェック
・糖尿病の方は皮膚が乾燥していないか?
・皮膚にかゆみはないか?
・皮膚の感覚があるか?
・水虫ができていないか?
・皮膚に靴ずれとか傷がついてないか?
など皮膚のチェックをかかさず行うようにしてご自身の足を守ってくださいね。
皮膚以外でも生じる糖尿病の初期症状
だるさ・疲れ
糖尿病の初期症状として、皮膚以外にだるさや疲れを感じやすくなることがあります。これは、高血糖によってブドウ糖がエネルギーとしてうまく利用できないためです。細胞はブドウ糖をエネルギー源としていますが、インスリンの不足や働きが悪くなると、ブドウ糖が細胞に取り込めず、エネルギー不足に陥ります。さらに、高血糖は体内の脱水を引き起こし、疲労感を増強させます。
体重減少
糖尿病の初期症状として、体重減少がみられることがあります。これは、高血糖状態でも細胞がエネルギーとしてブドウ糖を十分に利用できないため、体が脂肪や筋肉を分解してエネルギーを補おうとするためです。 また、多尿によって体内の水分が失われることも、体重減少に繋がります。 特に急激な体重減少は、糖尿病の可能性を示唆する重要なサインとなります。
目のかすみ・視力低下
糖尿病の初期症状として、目のかすみや視力低下が現れることがあります。これは、高血糖によって眼球内の水晶体の浸透圧が変化し、水晶体が膨張することで起こります。 また、高血糖は毛細血管を傷つけ、眼球内の血流を阻害することで、網膜症を引き起こす可能性もあります。網膜症が進行すると、視力低下や失明に至ることもあります。 目のかすみや視力低下は、一時的なものと、持続するものがあります。糖尿病の可能性も考慮し、症状が続く場合は、眼科を受診しましょう。
立ちくらみ
糖尿病の初期症状として、立ちくらみが起こることがあります。これは、高血糖によって自律神経が乱れ、血圧の調整がうまくいかなくなるために起こります。 また、脱水症状によって血圧が低下することも、立ちくらみの原因となります。 立ちくらみは、起立時や食後に起こりやすい傾向があります。
糖尿病の可能性も考慮し、頻繁に立ちくらみが起こる場合は、医療機関への受診をおすすめします。
糖尿病の方は保湿・スキンケアでかゆみ対策
肌の乾燥を防ぐ
糖尿病の方は、高血糖や自律神経障害などの影響で肌が乾燥しやすく、かゆみが生じやすいため、スキンケアが重要です。 保湿剤をこまめに使用し、肌の水分を保つようにしましょう。 特に、入浴後は肌の水分が蒸発しやすいため、入浴後すぐに保湿剤を塗るように心がけてください。 保湿剤は、季節や肌の状態に合わせて、自分に合ったものを選びましょう。

紫外線対策
糖尿病の方は、紫外線を浴びると皮膚の乾燥を悪化させ、かゆみを増強させる可能性があります。紫外線は、皮膚のバリア機能を低下させ、水分蒸発を促進するためです。 また、日焼けによる炎症も、かゆみの原因となります。 外出時には、日焼け止めを塗ったり、長袖や帽子を着用したりして、紫外線から肌を守りましょう。

肌の清潔を保つ
糖尿病の方は、高血糖によって免疫力が低下し、細菌感染を起こしやすいため、肌の清潔を保つことが大切です。 汗や汚れは、細菌の繁殖を助長し、かゆみや炎症を引き起こす可能性があります。 入浴は、ぬるめのお湯で、石鹸をよく泡立てて優しく洗い、十分にすすぎましょう。 シャワーだけでなく、こまめに汗を拭き取ることも効果的です。
糖尿病で皮膚トラブルを予防するために
バランスのとれた食事
糖尿病で皮膚トラブルを予防するには、バランスの取れた食事が重要です。 たんぱく質、ビタミン、ミネラル、食物繊維などをバランス良く摂取することで、健康な皮膚を保ち、免疫力を高めることができます。 特に、肌の乾燥を防ぐには、サバやイワシなどの青魚、カボチャやニンジンなどの緑黄色野菜がおすすめです。
ケガややけどに注意
糖尿病の方は、高血糖によって免疫力や治癒力が低下しているため、ケガややけどをすると、治りにくく、感染症のリスクも高まります。 また、神経障害によって感覚が鈍くなっている場合、ケガや、やけどに気づきにくく、重症化する可能性もあります。 日頃から、ケガや、やけどをしないように注意し、もしもの場合は、すぐに医師に相談しましょう。

足の蒸れに注意
糖尿病の方は、高血糖により免疫力が低下し、皮膚が乾燥しやすいため、蒸れによって細菌や真菌が繁殖し、皮膚トラブルを起こしやすくなります。 通気性の良い靴や靴下を選び、足を清潔に保ち、汗をかいたらこまめに拭き取るようにしましょう。 また、長時間靴を履き続けない、ストッキングを避けるなども効果的です。
糖尿病は血糖コントロールが重要
糖尿病において血糖コントロールは非常に重要です。高血糖は、皮膚の乾燥やかゆみを引き起こすだけでなく、血管や神経を損傷し、様々な合併症のリスクを高めます。血糖コントロールを良好に保つことで、これらの合併症を予防し、健康な皮膚を維持することができます。
足の皮膚症状に注意し糖尿病を早期発見しましょう
糖尿病をお持ちの方は皮膚トラブルが起こりやすく、最悪の場合足を切断して失ってしまうこともありますので皮膚のケア・チェックは欠かさず行ってください。
動画でも解説していますので、是非ご覧ください。